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ナショナル・ジオグラフィック
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「絶滅」した樹木の再生ケア
エリザベス・M・タスカー
ナショナル・ジオグラフィック・ニュース
2003 年 3 月 5 日
1 億 2000 万年前の葉の化石でしか知られていなかった奇妙な形をした樹木が、1994 年、オーストラリア、シドニーの西にある険しい山峡で、今も健在であることが明らかになった。
野生のウォレマイ・パインの数は 100 本にも満たないことから、科学者や園芸学者はこの木が今後も生き続ける可能性を増やそうと、繁殖に最大限の力を注いでいる。
2005 年から 2006 年にかけて、50 万本以上のウォレマイ・パインが庭園及び室内用植物として世界に向け販売される。
生きた 「恐竜」 の発見
シドニーの西 150 キロの場所にあるブルー・マウンテンは、広大な森林に覆われている。 標高は平均 1000 メートルほどだが、
通行不可能な岩壁や深い山峡がある険しい山岳地帯である。
ウォレマイの原生自然はその中でも最も人を寄せ付けない場所で、400 以上の深い谷を持つ高原地帯である。 これらの谷は柔らかい砂岩が侵食されてできた深い切れ目であり、
その多くが幅数メートルしかなく、氷のように冷たい水で満たされている。
ニューサウスウェールズ州国立公園野生生物保護局 (NPWS) の保護官、ディビット・ノーブル氏は 1994 年、山歩きの途中、
雨風のあたらない深い渓谷の中に異様な姿をした樹木が生育しているのを発見した。
それらの木の樹皮はチョコレートの泡のように奇妙なもので、その他にも複数の幹、らせん状に巻いたシダのような葉を持っていた。木の高さは 38 メートルにも及んだ。
ノーブル氏はその枝を数本持ち帰り、その後、NPWS やシドニー王立植物園 (RBG) の植物学者による分類学的研究が数ヶ月続いた。 その樹木は最終的に、
1994 年 12 月、新属および新種のウォレマイ・ノビリス (Wollemia nobilis) であると世界に発表された。
この発見は、こんにち生きた恐竜を発見することに匹敵する植物学上の発見である。
「オーストラリア最大の都市にこんなに近い場所で、植物学上ユニークな生きた巨木を発見したことは、大変意義がある。 それは科学者が夢にまで見た、
オーストラリアの先史時代にさかのぼるためのリンクなのだ。」 と、RBG 所属の園芸学者で、野生のウォレマイ・パインを最初に目にした植物学者の一人でもあるキャシー・オフォード氏は語った。
古代の森の遺物
ウォレマイ・パインはチリ松 (Monkey Puzzle tree) で知られる、古代のナンヨウスギ科に属す。これらは南半球の植物で、現在ではそのほとんどが南アメリカ、
ニューカレドニア、ニュージーランド、ニューギニア、オーストラリアの各地に孤立した状態で散在している。
古代の花粉のサンプルを調べると、ウォレマイ・パインやその同類種が1億年以上にわたり、南半球の森林に広く分布していたことがわかる。
約 200 万年前に世界的に起きた急激な気候の変化が、ウォレマイ・パインの衰退をもたらした。
シドニーの西にある山中の湿気の多い深い谷間に、奇跡的に細々と生きているウォレマイ・パインの小さな群生があった。
これらの木は何百万年という長い間孤立していたので、科学者にとっては稀に見る研究の好機会をもたらした。 研究結果によると、この木は遺伝的に全て同一であり、
これは今まで有性生殖する生物には見られなかった現象だと分かった。 その結果、科学者は遺伝学上の理論を見直さなければならなくなった。
ウォレマイ・パインは根元から複数の幹を発生する。 これは「コピシング」として知られる。 大多数のウォレマイ・パインは数本の幹を持つが、ある一本の巨大な木には 160 本もの幹がある。
「ウォレマイ・パインが生き延びてきた理由は、コピシングだと思われる。 主となる幹が傷ついたり死んだりした場合、若い幹がその代わりになるよう後に控えているのだ。」 と、オフォード氏は述べた。
保護と繁殖
1994 年の発見以来、近くの山峡で小さいウォレマイ・パインの群生が2つ見つかり、野生のウォレマイ・パインの総数は成木 76 本、若木 200 本となった。
このように発見された数は増えたが、ウォレマイ・パインは依然として世界で最も希少な樹木であることには変わりはない。 したがって、
特に外からの影響や病気によって絶滅する危険性が高い状態にある。
「一番深刻な脅威は人間である。 ウォレマイ・パインの生息環境は、外部からの影響を非常に受けやすい。」 と、オフォード氏は語る。 現在、
保護と研究を共同で行っている NPWS と RBG は、厳格な保護対策を導入している。
オフォード氏によると、ウォレマイ・パインの生息地は極秘となっており、生息地を乱した者には 22 万豪ドル (13.3 万米ドル相当) の罰金が課される。
主な群生地への訪問を許されるのはごく少数の研究者だけで、しかも雑草や病気を持ち込まないように、衣服を着替えるなどの厳格な隔離対策を守らなければならない。
野生のウォレマイ・パインを盗もうとする人々の誘惑を減らし、世界的にこの木の総数を増やすため、管理委員会は庭園用植物としての販売を目指し、
ウォレマイ・パインを繁殖することに決めた。 クィーンズランド州にある民間会社のバークデール・ナーサリーと、同州政府第一次産業省 (林業) にその権利が与えられた。
2000 年には、ブリスベンの近くに高度な防護設備をそなえた特別な施設が建てられ、切り枝や種から栽培した 400 本の木が RBG から渡された。
「ウォレマイ・パインの栽培は、非常に順調に行っている。」 と、バークデール・ナーサリーのジェネラル・マネージャーであるバーバラ・マギオフ氏は語る。
「2005 年から 2006 年の販売開始時期までには、50 万本以上の木を用意したいと思っている。」
マギオフ氏によれば、ウォレマイ・パインの販売から得られる販売権料は NPWS と RBG に渡され、野生のウォレマイ・パインやその他の絶滅の恐れのある植物の保護に使われる。
ウォレマイ・パインはすでにオーストラリア文化の一部になりつつある。 学校教育のカリキュラムの一部に組み込まれているし、ウォレマイ・パインに関する歌もできている、とオフォード氏は語る。
「森林地帯を保護する必要があると訴えている。 森林について十分な知識があると思っていても、何か新しい発見があるかもしれないのだから。」 と、オフォード氏は続けた。
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